地方創生をやめたくてもやめられない一番の理由,「地域の魅力」の呪いとは?

みなさん、こんにちは。

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地方創生の成功事例には,次のようなタイプのものがあります。

誰も注目しなかったわが町の魅力を新たに発見し,新しい切り口で発信してみたところ,都会の新しい価値観をもった若い人たちに評価され,首都圏からの定住人口が増加した

ほとんどの自治体がうらやむ,まさに絵に描いたような成功事例といえるかもしれません。

自治体の首長,議員や,地方創生関係担当の課長などがこういった例を知っていると,「うちだって魅力は十分だ!地方創生の交付金を使ってどんどんPRしてみてくれ」ということになり,成功事例をトレースしたようなPR事業が今も盛んに行われています。

 

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しかし,残念なことに,そのほとんどが目的を達せずに単なる打ち上げ花火のように終わってしまいます。
いわば,地方創生の勝ち組と負け組が発生してしまうのは,一体なぜなのでしょうか?

これについて,自分の地域の強み何かであるかを正しく認識しているかどうかが重要だ,とよく言われます。
地域には何か魅力があるはずだけど,それを正しく認識できていない,または正しくマーケティングできていないだけだという考え方です。
こう言われると,まじめな地方創生の担当者は,いわば,自分たちの地域の「売り方」が間違っているだけで,もっと他の方法であれば,地方創生の成功事例が作れるはずだ,と考えてしまうかもしれません。
しかし,本当にそうなのでしょうか?
地方創生が目的とする,定住人口・関係人口が増加につながる,「住んでみてもいい,積極的に関わってみてもいい」というような魅力が,そもそもその地域に備わっていないのではないかという可能性をまず考えてみるべきではないでしょうか。
豊かな自然環境が備わっており,それほど不便でも無く自然派の生活が可能なレベルである田舎と,雑多な地方都市でしかない田舎のどちらも,同等の魅力を持っているといえるでしょうか。

 

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地方創生の移住関係の成功事例の雑誌記事などをみていると,「この人たちはこんな田舎に移住してどうやって生活を維持しているんだ?」というあまり生活感のない人々がよく特集されています。
こういった方々は,デザイン系やデジタル系の仕事で,場所を選ばない仕事をされているのかもしれません。または,お金持ちの家計で,田舎で稼げなくとも他の資産で十分暮らしていける方々かと思われます。
言ってみれば,土地に縛られない富裕層の方々です。その土地で生業をもつ必要がないのであれば,おそらく別荘をたてるような感覚で,移住先を選ぶのでしょう。素晴らしい田舎生活を想像させる豊かな自然を持った地域はそういった方々に選ばれることができるかもしれませんが,どこにでもある地方都市,いわば中途半端な田舎がこういった方々のお眼鏡にかなうことは難しいかと思います。

 

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地方創生の移住関係の政策は,こういったロハスな考えを持つ都会の一部の富裕層の取り合いであって,PRの巧拙というよりも,その地域がもともともつ歴史的,地理的,文化的性質によって,すでに勝負は決まっているのではないでしょうか。
スタート地点がはじめから違っているので,中途半端な地方都市がいくらがんばっても勝負になりません。
こうした事実は,当たり前のように見えますが,自治体内部で「うちの地域は魅力が無いので地方創生をやっても無駄ですね」と公言できる職員はまずいないでしょう。

「地域の魅力」という言葉は,地方創生の事業をつくる中で,最も多用される言葉です。むしろ,この「地域の魅力」があるという前提に立たなければ,地方創生事業はその正当性を失ってしまうといえるほどの核となる概念といえるかもしれません。自治体は「地域の魅力」を否定することは絶対にできません。「うちの地域は何の魅力もありませんよ」と認めることになってしまうからです。いわば,地域のプライドといってもいいかもしれません。地方創生はそのプライドにつけ込んできたような考え方です。「うちの地域だって本気を出せば魅力があるはずだ」というプライドをくすぐられた自治体が,闇雲にアピール合戦を繰り広げているような様相となっています。そんなものに都会の方々はだまされず,自分の都合に合った場合にだけ,田舎とつながりを持つのでしょう。


自治体の職員が認識すべきものは,絵に描いた餅のような「地域の魅力」では無いはずです。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!