新聞記事感想~先進事例との正しい接し方とは~

みなさん、こんにちは。

f:id:po-man:20211117105655p:plain

 

日本経済新聞11月24日記事opinion 「外の人」が導く地域の革新

 

 

要約
岐阜県高山市は訪日観光客の恩恵が大きかったため,コロナで打撃を受けている。
・IT分野人材を育てるために,高山市に住みながらIT人材として働くための取組を推進
・観光事業についても,飛騨高山ブランドを高めるため,インバウンド,アウトバウンド,アウターブランディング,インナーブランディングに分けて戦略的に考える
・今後の観光戦略には企業経営の視点が必要
・コロナを機に地方は街の魅力を見直しできるはず

 

 

私自身まだインバウンドが過熱する前に飛騨高山には2回行ったことがあります。

また行きたいと思える大変雰囲気のよい観光地だった記憶があります。
外国人受けする日本的な風景で,インバウンド客が押し寄せたのも当然でしょう。

 

 

高山市の人口を調べてみると8万6千人,歳出予算は474億円程度とのこと。
非常に有名な地域ですが,自治体としての規模はあまり大きくないようです。

 

 

今回記事で取り上げられた,IT人材を地域に根付かせるための取組は,記事だけ見ると非常によい取組に思えますが,自治体が行う「事業」というものを知っていると,本当にそうなのだろうかと少しうがった見方をしてしまいます。

 


三木清小林秀雄との対談の中で,「人は自分のことが新聞に載っていと嘘ばかり書いていると分かっているのに,それ以外のことは本当のことだと思って読んでしまう」といったことを述べています。
本当にその通りで,自治体の行った先進事業を紹介するタイプの記事は,斜に構えて読んでしまいます。

 


例えば,今回の記事も,IT人材を地方で育成するためのプロジェクトがはじまった,というだけです。
これが成功するかどうかは数年後にならなければ分からないのに,いかにも素晴らしい事例のように取り上げられるのに違和感があります。
新たな取り組みがニュースになるのは別にいいのですが,自治体が税金をつかって行う以上,その結果どうなったかというチェックが行われるべきです。

 


しかし,事業が取り上げられるのは華々しく発表されるときだけで,それが結果どうなったかが報じられることはまれです。

 


自分が関係する事業でも,企業とのマッチングイベントを行い,その後,成立案件はありませんでした。
マッチング当日の様子は地元の各局で報じられましたが,その後どうなったかを取材する記者はいません。

 

takeaway.hatenablog.jp

 


また,自治体の方でも,イベント実施の際にはプレスリリースしますが,その後事業がどうなったかの成果をプレスリリースする動きはまずありません。
決算審査,行政評価,監査といったチェック機能はありますが,マスメディアと違って市民が関心を持つものではないでしょう。

 

 

こうした事業の報道は,いかにもよい取組事例のように報じられることで,事業を行う自治体に「やっている」感を与えてしまいます。
また,他の自治体からも先進事例のように捉えられ,安易に似た事業が全国で行われることにもなってしまいがちです。

 

 

こうした弊害があるため,自治体職員はメディアで報じられる先進事例は一歩下がった冷静な目で見た方がいいでしょう。


担当レベルであれば,実現可能性や効果などが分かっているので容易に先進事例に飛びつかないと思いますが,新聞ばかり見ている課長などがひっかかりやすく厄介です。

 

 

記事の最後の「地域の数だけ磨くべき魅力がある」とのご指摘のとおり,わがまちと他のまちは抱える問題が異なります。
安易に聞こえのよい先進事例をまねてしまわないよう注意したいものです。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!