フルセット行政と地方創生~『この国のたたみ方』佐々木信夫著 感想~

みなさん、こんにちは。

 

『この国のたたみ方』佐々木信夫著 新潮社を読んでいます。

 

 

人口減社会では現在の47都道府県体制は高コストで,卸売業者でしかない県庁は道州制組み替えてしまった方がいいという意見で,そのとおりだなと思いながら読んでいます。

 

この中で,都道府県の無駄として,フルセット行政ということがいわれていました。


「おらがまちにも」という意識のもと,どの都道府県にも港湾,空港が整備されている。
また,図書館や博物館なども,市町村が整備していても,都道府県も同様のものを必ず整備する。
商工振興施策なども都道府県が市町村とは別に独自で行う。
都道府県が自らだけで100%の機能を持とうとすることから,このような無駄が生まれているとのことです。

 

 

これを読んで思い出されたのが,昨今の地方創生の取組です。

 


地方創生で全国の自治体が行う似たり寄ったりの移住促進,販路開拓,インバウンド誘致の事業も,いってみればフルセット行政の1メニューといえるかもしれません。
それぞれの施策が,本当に自らの県に必要かを考えず,他県もやっている取組はとりあえずやってみる。

 

特に,販路開拓やインバウンド誘致などは,「県」単位で行う必要は全くありません。
消費者にとって○○県ということが意味のない中で,○○県の産品,○○県の観光地だけを対象としたPR事業を行うことは,まったくナンセンスです。

例えば,インバウドでは○○県と県内の○○市がそれぞれ別個にインバウンド向けPR事業を行っているという全く非効率な状況です。
観光客にとっては○○県や○○市ということは何の意味も無いことはインバウンド担当者なら誰でも気づいています。

 

また,うちの県でインバウンドをやっても観光地として魅力ある他県と同様に成功するはずがないという場合でも,首長や議員から○○県としてインバウンド事業をなんとしてでもやらなければならないという声があるため,やむなく事業を行っている状況です。

 

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さらに良くないのは,都道府県のこうした地方創生事業が,市町村の事業を食ってしまっている可能性があるということです。
都道府県の方が,一般的に採択される地方創生事業の作り方を知っています。
その結果,どうしても都道府県の事業の採択数が多くなり,市町村の採択数が少なくなってしまいます。
都道府県の行う地方創生の事業は,市町村が行う場合に比べて薄いものになってしまいがちです。

 

 

地方創生事業については,基礎自治体である市町村が工夫を凝らした事業を行うべきで,都道府県はしゃしゃりでない方がよいと思います。
都道府県の地方創生担当者はあまりがんばりすぎない方が,県全体のためにはなるかもしれません。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!