『ライク・ア・ローリング公務員 まち思う 故に我あり』感想② 公務員のキャリアパスの参考になります~点の仕事から面の仕事へ~


みなさん、こんにちは!

 

前回に引き続き、『ライク・ア・ローリング公務員 まち思う 故に我あり』福野博昭(木楽社)の紹介を続けます。

 

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前回は単に読み物として面白いとの話でしたが、この本、若い公務員の皆さんが今後のキャリアパスを考える参考になります。

 

筆者の福野さんが、県税事務所に始まり、退職するまでの所属が全て書いてありますし、時系列に沿って一人の公務員のキャリアパスをたどる形になっています。

 

福野さんは県税事務所にはじまり、奈良公園の管理事務所と地方事務所時代が10年続き、その後本庁に移り、最終的には観光振興、地域振興関係を担っていきます。

 

興味深いのが、公園の管理事務所時代にトイレを建てたりして培った建築の技術をのちに古民家再生に応用したりと、過去の経験を活かしながら最終的にはご自分で最も興味のある奈良南部の観光振興や移住促進を通した地域振興に注力していくというところです。

 

点と点でやっていた仕事が、

だんだんと経験やネットワークを活かして「線」や「面」で動けるようになっていったなぁ

とおっしゃっています。

 

これは若い人がキャリアパスをイメージするうえで、とても参考になる先輩のひとことかなと思います。

 

公務員は異動で部署を転々とするものの、最終的には何かしらの方向性が決まってくるもの、という意識は今から持っていた方がいいということかと思います。

 

私自体、県庁に勤めて10年ちょっとですが、当初は県職員、特に事務職員はジェネラリストたるべきなのだから、異動に対してとやかく自分の希望を出さずに、適材適所に配置してもらうのが組織のためにも一番良いと考えていました。

 

入庁して数年は本当に、希望したところでジョブローテーションでさまざまな部署を経験させられるのですが、さすがに10年目くらいからは自分の方向性というのは意識し出した方がいいぞと思ってきました。

 

やはり、もう少し上の課長補佐レベルをみていると、担当時代に経験した部署に補佐として戻ってきたり、その後もたまに別の部局にいくことがあっても、大体観光分野に強い人、保健福祉分野の人、管理分野の人と、やはり色は決まってきます。

 

筆者の福野さんもやはりそうで、若いころはいろいろ経験しつつも、最終的には奈良南部を奥大和とブランディングし、その地域の振興関係の仕事に収れんしていきます。

 

結局、ある程度自分が思ったように仕事を回せるのは課長補佐以降となるかと思いますが、その時になって無策でいるのももったいない話なので、担当時代から、「自分だったらこうする」ということを大事にしておくべきかと思います。

 

10年目くらいになってくると、組織から見て、「この人にはどういうことを任せたい」と自分がみられているかというのはだんだん分かってくる気がします。

 

おそらく、福野さんの言葉でいえば、「1から1をつくる」管理型のひとと、福野さんのように「0から1をつくる」事業をつくるエンジンとなることを期待される人のどちらかのタイプに分類されていくと思っていいかと思います。

そうやって組織からどうみられているか、ということはありますが、そのうえで、「自分はこういう分野をやりたい」ということがあれば、早めに意識しておいて、損はないかと思います。

 

ただ一方で、そうやって自分がやりたい分野に戻ってきたときに、思った通りに事業を動かせるか、というと、それは結局それまでの仕事で築いてきた「点」があるのか、そしてそれを「面」にできるのか、ということになります。

 

そこのところを福野さんは築いてきた経験と人脈で「面」にしていくわけですが、もうそこは人間力です。

 

やはりこの本が公務員の話として面白いのではなくて、福野さんの話として面白いのからも分かるように、結局最後は公務員としてというより、人間としてどうかというところに尽きるというのが厳しいですが現実のようです。

 

とはいえ、だれもが福野さんの真似をするのは無理でみんなちがってそれでいいと思いますので、この本からも少しでも真似できるヒントを得られればそれでいいのかなと思います。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!