『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』感想② みんな嫌だけどけどまちづくりにどうしても必要なもの

みなさん、こんにちは!
前回に引き続き、『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』の感想です。
いろいろひっかかる部分の多い本なのですが、『ライク・ア・ローリング公務員』に比べて記載が緻密で分量もあるので読む方は少し肝を据えて読んだ方がいいかと思います。
(作者の福野さんの奈良弁で語られる『ライク・ア・ローリング公務員』が異常に読みやすいだけかもしれませんが)

さて、『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』は、まちづくりをおこなう株式会社Wacreationの立ち上げまでとその活動の話です。
代表取締役の手塚さんは、リクルート出身で人材マネジメントのプロです。
そのため、非常に戦略的・合理的な思考をしています。
もともと株式会社Wacreationは手塚さんが立ち上げましたが、手塚さんの属人的なものにしないようスタッフを育成し、手塚さんなしでも市民に受け入れて活動できるようにすることを見据えています。
手塚さん自身は謙虚な方で、皆でつくっていると繰り返し書いていますが、やはりそもそもこの活動がここまで来れたのは、手塚さんがいたからだと思います。

 

 

ここで、すごく優秀な人がたまたまいた流山市は幸福でしたね、と言いたい訳ではありません。


手塚さんはとびきり優秀だったのだと思いますが、いずれにせよ、まちづくりを進めるには、だれかがマネージャー役を引き受けてひっぱっていかないといけない、ということです。
machiminが行ったのも、まちづくりに参加したいと思っているけどなかなか踏み出せないでいる市民を結びつける活動です。
それぞれ眠っている才能を発掘して、まちづくりに参加してもらう。
「個人の「好き」の社会化」と紹介されていましたが、まさに手塚さんが先行されていた人的資源管理そのもので、人材(市民)を会社(流山市)のために適切に使っていくことでまちを魅力的にしていきます。
自分のまちがよくなったらいいな、と思っている人は結構いるかと思いますが、それだけでは具体的な動きにならなくて、それを誰かがおせっかい役となってまちづくりに呼び込んでつなげていく必要がある。

手塚さんも、冷蔵庫の中にある材料をみて、どんな料理を作るかに似ているといっています。
それぞれの材料が、料理になるためには、料理人が必要ですが、まちづくりにはひとを結びつけるマネージャーというか、世話焼き人が必要ということかと思います。
いってしまえば、みんなに参加してもらうためにはだれかが全体の面倒をみないといけないということです。


面倒な損な役回りのようですが、捉えようによっては全体をコーディネートするマネージャーでもあり、編集者のようなものです。
外山滋比古さんの名著「思考の整理学」にもエディターズシップという言葉がでてきて、ここでも料理人の例が引かれるのですが、マネージャーも今あるものから新しい価値を創造するクリエイティブな仕事という意味で編集者と同じです。

 

AIに仕事が奪われる、などと言われますが、誰かと誰か、何かと何かを結びつけて新しいものを生む仕事は、今後価値が高まっていくかと思います。
面倒なので誰もやりたがらないけどみんなが実はだれかやってくれないかな、と思っている仕事です。

手塚さんのような「株式会社流山市の人事部長」とまでいかなくとも、たとえばPTA会長、町内会の役員、はたまた所属の親睦会の幹事長まで、こういう仕事は面倒がられますが、絶対になくてはならない仕事ですね。

今年ベストセラーになった「人新世の資本論」などの中にも、今後は誰かの面倒を見るケアといった分野が重要になる、という話がありましたが、これまで面倒がられていたこれらの役割の重要性は見直されていく必要があると思います。

 

各地でまちづくりが進まないのも、第一には手塚さんのように、「自分がまちづくりについて本気で考えよう、面倒なことも引き受けよう」という市民がまだまだ少ないのが原因でしょう。

 

映画『ボストン市庁舎』でも見られたように、皆で意見をすり合わせて何かを進めるというのは面倒なことですが、そうするしかないものです。
市民もそうですし行政も、その面倒なことを引き受けていくことで、いいまちがつくっていけると思います。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

 

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