『もしわたしが株式会社流山市の人事部長になったら』感想④ 子どもを一時保育に預けてまちづくりに参加するお母さんはひどい?

みなさん,こんにちは!
「もしわたしが株式会社流山市の人事部長になったら」(木樂舎)の感想続きです。

今回は,子育てをしながらの地域活動について考えてみます。

この本は,図書館だと「公益企業」に分類されていますが,人材マネジメントの本でもあり,まちづくりの本でもあります。
また,子育てとまちづくりの両立,働く女性とまちづくりに関する本ともいえます。

著者で株式会社WaCreation代表取締役の手塚さんは,もともとリクルートの社員で,流山市に住みながら都内に通勤していました。その中で,地域貢献が仕事にならないかと思い立ち,いろいろと活動をした後まちづくり事業を担う株式会社を立ち上げています。

手塚さんの会社は流山鉄道の駅前で観光案内所兼コミュニティーセンターmachiminを運営しています。
いろいろな方が立ち寄って,活動に関わっていくことになりますが,やはり平日動ける人は女性,シニア,学生が多かったとのことです。
machiminには普段都内ではたらくお父さんたちにも経験を活かして関わっていきますが,やはり普段はお母さんたちなどが多い。

その中で,machiminの行事に参加するお母さんが小さい子供を一時預かり施設に預けて参加した,というエピソードがありました。流山辺りだと,そんな開けた考えの人たちがいるのだ,都会だなぁとと衝撃を受けました。
私は完全に閉鎖的など田舎ではなく,人口10万くらいの地方都市に住んでいますが,そこでさえもこういう行動ができる人はいないと思います。
「こどもがかわいそう」と非難する人もでてくるかもしれません。

手塚さん自身も子育てしながらの活動であったため,子供をだっこしたままイベントのビラ配りをしたそうです。
その際にやはり,「こどもがかわいそう」と見知らぬ人に言われたとのこと。
一方で,流山市役所のスタッフは「これからはこういうお母さんの姿が当たり前になる」と応援してくれたとのことです。

地域のお母さんたちに限らず,お父さんたちも,とにかく子育てに忙しく,子供の面倒をみるので精一杯で地域活動などとてもとてもという状況かと思います。

しかし一方で,都会の方に行けば行くほど,一時預かりを利用したり,子育てとうまく折り合いを付けながら,自分のやりたいことをやっている親御さんたちがいる,ということでしょう。

自分がやりたいことをするために子供を預ける,というのは,日本の慣習的にはなじみがなく,抵抗が多いでしょう。

しかし,所変われば文化も変わるもので,イギリスなどでは全く当たり前のことであったりします。
言わずと知れた名作映画『男と女』でもこれは一時預かりと違いますが,こどもはとっとと寮に預けてしまって,自分たちの恋愛を楽しむ男女がでてきて,初めて見たときは驚きました。

こうした子育ての文化の違いについて,『イギリスのいい子 日本のいい子』という本にあった例がとてもわかりやすかったです。

あるイギリスを旅行中の子連れ日本人夫婦のホテルでの体験が紹介されています。
小さな子供をもつ夫婦がイースター休暇にしゃれたホテルを訪れ,連泊することになります。
一日目は子供同伴で食堂で子供も大人と同じようなものをたべましたが,二日目の朝,「”お子さんの”食事の時間は何時にしますか」と聞かれます。
夫婦は何を聞かれているか分かったのですが,どうも子供だけ一人で早く食事をし,大人の食事の時間は子供は一人で部屋で待っていなければならないということだと分かります。
夫婦は困りましたが,どうしてもそうしないといけないとのことで従いました。
その日は先にこどもの食事の時間となり,いってみると大人用とは違うお子様向けメニューがきちんとだされましたが,一人だけ食事することになれていない子供は大暴れし,夫婦はほとほと疲れてしまいました。こどもを部屋に残しておけないので,自分たちも夕食は掻き込むかたちとなります。
その次の日はこどもが一人の食事でぐずらないよううまく工夫してなんとかやってみると,食事後に子供はよく眠り,自分たちも出産後はじめてと夫婦2人の落ち着いたディナーをとることができたということでした。

この「イギリスのいい子 日本のいい子」のように,他の国の文化の謎解きをしてくれる本はいろいろな考え方がわかって大変おもしろいですね。

日本ではこども一人で食事させて大人はあとで,など言語道断という感じがありますが,子育てしながらも大人は大人の時間を大事にするイギリスではなにもおかしなことではない,ということです。逆に,大人の時間に子供を連れてくる方が嫌な顔をされるとのことでした。

どちらがいいという話でもなく,いろいろな考え方があります。

またボストン市庁舎の話になり恐縮ですが,とにかく「多様性」大事だと強調されていました。
子供を一時保育に預けながら自分も大事にする親御さんがいて,またそうした人がまちづくりに参加してくれるのは本当は地域としては避難すべきではなく,歓迎すべきことではないでしょうか。
そんな懐の深いまちになるといいですね。

それでは,スーパー公務員によろしく!