ボストン市庁舎感想⑤ 追いつめられがちな若手公務員のメンタルを救うひとこと

みなさん、こんにちは!

前回、映画ボストン市庁舎を引き合いに出しながら、住民や関係者との調整などの面倒な業務で仕事が進んでいないように感じても、それ自体が民主的なプロセスであると考えれば、仕事が進んでいないと思い悩む必要はないのでは、という話をしました。

 

私はボストン市庁舎を見ながらこの考えが浮かびましたが、これに限らず違う視点をもつことは公務員として働くうえで精神衛生上とても大事だと思います。


ひとことで言うと、1つの考えに縛られて追いつめられてしまわないということ。
公務員はメンタルを患ってしまう方も多いため、仕事を続けていくためにも大事なことです。
特に、若い職員の方にこそ、仕事に対するいろいろな考え方を知ってほしいです。

 

というのも、若い職員は経験がないため、今自分が直面する状況を客観的に見ることができません。
客観的にみるための材料がまったくない状況です。

 

例えば、前回も触れた「仕事が進んでいる」ということに対する認識についてみてみるとどうでしょうか。
経験者からすれば、この仕事は関係者の意見を取り入れながら進めるので、簡単には進まないだろうと見える仕事であったとします。
しかし、一生懸命な若い職員は、スムーズな仕事の完成があるべき姿だと思っています。
そのため、調整などに時間がかかると、それば仕事が進んでいないと悩んでしまう。
そういった調整が本来必ず発生してしまうプロセスであったとしても、それが分からずにただ面倒事が起きていると思ってしまいます。

 

これも、誰かがひとこと教えてくれれば「ああ、気にする必要ないのね」と分かって楽になる話ですが、そうした人がいないと1人悩むことになってしまいます。

 

「いや、若いのだからその中でがむしゃらに頑張って自分で覚えていくものだ」という精神論もあるかもしれません。
しかし、これは本来周りが教えてあげるべき仕事の目的や性質を新人にきちんと伝えていないだけではないでしょうか。

 

私自身、部署が移って県の上層部とのある出張の際に、詳細なマニュアルづくりで連日遅くまで時間外をしたことがありました。
スマホで何でも調べられる時代に、ここまで詳細なマニュアル作りに何の意味があるのかと思いつつ、それが最も重大事であることのようになっていたため、そういうものかと思って必死に頑張りました。
しかし、その行事を終えてみて、その部署での仕事も長くなると、どう考えても無駄な仕事であったことが分かってきました。
部署を移ってきたばかりの自分にははじめ事の軽重が判断できなかったですし、一回もやってみずに「それは無駄ですね」とは言えない状況だったとは思うため、マニュアルは作るだけ作らされたと思います。
それでも、誰かひとことでも「一応つくることになってるけど対して重要なものじゃないよ」と教えてくれれば心理的に相当楽だったはずです。

 

関連して、日経新聞日曜版の中の連載コラム、坂井修一さんの「うたごころは科学する」の2021年12月12日(日)掲載「模範解答を離れて」の中で、こんな話がありました。


われわれの人生や社会の諸問題は、決断のための材料が揃っていないことの方が多い。まして、模範解答などどこにもありはしない。受験秀才の中には、30歳近くになってもこのことに気付かない人がいる。

 

公務員が直面する地域の問題もこのとおりで、模範解答はありません。
どうにかして解決法が見つかってしかるべきだ、と思っていると、簡単には解決法が見つからずどうも仕事が進まない、と悩んでしまうことになるかもしれません。
そのようなときに手を抜いていいとか、解決しなくていいとか、そういうことではなくて、公務員が扱う仕事は面倒で、進まないけど、そのプロセス自体も仕事、と思っているといいのではないかと思います。

 

若い職員の方には思い詰めて欲しくないですし、自分も思い詰めなくていいよといってあげられるようになりたいと思っています。

 

そういった意味でも若い方にもボストン市庁舎おすすめです。

それでは、スーパー公務員によろしく!