「東京からの地方移住で100万円」でもほとんどの地方には関係がなさそうな理由

みなさん、こんにちは。
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2020年12月7日の日本経済新聞に「地方移住 住宅に100万円 東京23区居住者 購入でポイント」という,移住者がのどから手が出るほど欲しい地方の自治体には一見うれしいニュースが掲載されていました。

記事の概要です。
・東京23区在住または東京23区の企業に勤務する人が地方の住宅を取得する場合ポイント付与。
・新築住宅の場合は省エネ住宅が対象。中古住宅は省エネに限らず対象。
・ポイントは1回当たり最大100万円。家電などと交換可能。
・来春の実施目指す。
・コロナ禍の影響でテレワークが盛んに也,東京から地方への転出超過が続く。
・移住しなくとも省エネ住宅の購入等でポイント付与。

見出しだけ見てしまうと,地方移住政策の話のようですが,最後まで読むと地方移住に限らず省エネ住宅取得でポイントを付与するようなので,住宅取得促進施策のニュースでした。
国も地方創生などと言いながら,結局地方移住の促進にはお金をばらまくしかないという本音を出したのかと驚きましたが,地方移住も対象となるのはおまけ程度で施策の目的は建築業のための住宅取得促進のようでひとまず安心しました。

しかし一方で,自分も地方に家を買うべきか目下悩んでいる身でこの施策を考えると,一体どんな人を想定して制度設計したのだろうと疑問に思いました。

例えば,東京地方で中古住宅を購入した際にポイントをもらえるようですが,どんなケースが想定されるでしょうか。

次のようなケースが理想として想定されていると思います。

現在マンションを都心に保有しているIT企業の社員が都心のマンションを売り,自然豊かな田舎の空き家を購入し,おしゃれにリノベーションしてそのまま永住する。

しかし,現実には田舎の中古住宅を購入することは,この例のようないかにもな空き家でなくともリスクが伴います。
田舎で中古の木造一軒家を購入した場合,この社員が現在30代として,定年を迎える頃には,資産価値は限りなくゼロに近いでしょう。
そんなものをわざわざ購入して捨て身で移住する奇特な方がそんなにたくさんいるでしょうか。

先ほどの例で言えば,都心のマンションは保有したまま賃貸にし,いざというとき都心に戻れるように残すなど,田舎に完全に軸足を移してしまわないよう賢い選択をしてる人たちの方現実的に想定しやすいです。

または,地方移住といってもこの制度が活用される移住先の地方は東京近郊や大阪,名古屋,札幌,福岡などの地方の大都市にとどまることも想定されるでしょう。

この手の記事で使われる「地方移住」という言葉は聞こえが良すぎます。
大阪も,○○県の人口5万程度の○○町も同じ地方になってしまっています。

問題なのはこの「東京からの地方移住の住宅取得で100万円ポイント付与」という言葉が1人歩きして,東京からの移住者増の恩恵をわがまちも受けうると誤解した自治体で,これに関連した移住PR事業などの不毛な事業が次々と作られてしまうことが想定されることです。

「東京からの地方移住の住宅取得で100万円ポイント付与事業も始まり,テレワークなど地方移住の流れが加速」などと冠をつけてしまえば,地方移住のPR施策などはいとも簡単に事業可されてしまう様子が目に見えるようです。

自治体の地方創生関係の担当者の方々にはこうした政策に乗っかって安易に施策立案せず,冷静な目でみていただきたいなと思います。


それでは、スーパー公務員によろしく!