愛知県 豊田市 山村に定住する職員募集

日本経済新聞2020年12月21日記事
愛知県 豊田市 山村に定住する職員募集

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・愛知県豊田市トヨタ自動車と中心とした工業都市だが,半分が山村
・市内の山村地域に定住することを受験資格とした職員を募集。
・豊かな自然と居心地のよさ,デジタルでつながり家族との時間を大切にできる」と魅力をPRし,5人の枠に180人程度の応募有り。
・採用後は山村地域の支所に配属

この記事を見たときには,「ついに田舎に移住してもらうためには正規の職員として採用するところまで来たか」と思ってしまいました。
一定期間職員として採用し,あわよくば移住してもらう地域おこし協力隊の最終形のように見えたからです。

ところが,都会でもあり田舎でもある豊田市だからこそできたかなり考えられた施策のようです。

この山村定住事業の募集要綱を見てみますと,最初の配置は山村の支所ですが,その後は通常の人事異動となり,都市部に配置されるチャンスがあります。
また,採用者の住居探しを役所が手伝い,空き家の活用につながるようになっています。

豊田市の令和2年度の事務職の採用試験に610人が応募し,29人が合格する高倍率となっています。
この山村枠は179人が受験し,5人が採用されたようですが,もともと人気のある自治体職員試験で,年齢が59歳以下と門戸が広いため,高倍率なのも頷けます。

さらに,豊田市自体が山村地域を有するとはいえ,基本的には記事にもあるように人口42万人の大規模な工業都市で名古屋へは高速で1時間程度です。

つまり,これは「過疎化する地域が移住者を確保するための苦肉の策で田舎暮らしの魅力を味わえる田舎定住の職員を募集したところ応募が殺到した」ということではなく,「もともと志望者の多い市役所が居住地の条件付きで職員を募集したところ,条件付きにもかかわらず多くの応募があった」ということです。
「都市部と隔絶されてはいない山村への移住」が志望者にとって魅力的,または許容範囲だったからこそ,住居について条件を付けた募集に成功し,空き屋解消や地域の担い手確保もできたということでしょう。

この記事をみて,「うちの町でも!」と考えるまえに,もともと豊田市は人口が多く,田舎でもあるが都市の部分も持っており,普通の過疎地とは全く別である点を重視しなければなりません。
豊田市と似た,ある意味自治体職員の「買い手」として強い立場にある自治体は,豊田市をまねて採用にいろいろと条件をつけることで,移住施策の観点から望ましい人材だけを採用することができるかもしれません。
実際,豊田市がこの山村枠で,「妻子帯同の若い世代」という条件を付けても十分望んだ職員を確保できたのではないでしょうか。

「都市に近い」というのは移住施策において圧倒的に強いです。
リモートワークの進展で都会から地方へなどと言われますが,今回の例のように,その地方においても魅力があるまちにはひとが集まり,そうでないまちからは流出する流れは,変えられません。

人口増に期待できないまちでは,人口増一辺倒ではない施策を考えていく必要があります。

それでは、スーパー公務員によろしく!