都市につまみ食いされる地方~日本経済新聞2020年11月24日朝刊記事感想~

みなさん、こんにちは。

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2020年11月24日の日本経済新聞朝刊記事,「働き方innovation 一つの仕事で満足ですか② 都市と地方,デュアルに「相思相愛」ネットが縁結ぶ」の感想です。

 


記事要約。
・製薬会社の社員が副業として北海道の木材加工の企業の取締役を務める。
・仕事後にPR戦略会議などをネットで実施。
・副業経験は本業にも生きる。
・地方としても人材不足の解消に。
・意見募集したところ,地方で働いたり暮らしたりしたい人が増えている。
・都会・田舎の枠にとらわれず,都会8割,地方2割などの新しい働き方も考えられる。
以上

 

 

今回の記事からは,都市部の大企業は都市も田舎も関係なく市場としてしか見ていないというという当たり前のことが分かります。


今回の記事は,ビジネスの始め方が,これまで一般的では無かった企業に就職しながらの副業という形であるというだけで,「田舎でもビジネス案件があったため,都会に住みながら田舎でビジネスを始める人がいる。」というだけのことです。


企業から見れば都市も田舎も関係なく市場で有り,田舎でビジネスが成立するのであれば,新規にビジネスしてみるし,見込みが無ければ引き上げていくだけでしょう。

 

記事では地方と都市部の人の関わりが促進されるといった取り上げ方をされていますが,あくまでビジネスがあっての関係性であるということに注意しなければなりません。

 


地方の自治体は地方創生の施策を競って考えていますが,結局の所地方でビジネスが成立するのかという観点でしか市場は見ていないということでしょう。

今回特集された,都市部に住みながら地方でも副業ができる人材は,都市部だけの生活から一歩進んだ,仕事の場が都市部だけに限定されない新しいエリートのホワイトカラー労働者と言えるかもしれません。

 

takeaway.hatenablog.jp

 

IT等の分野では既に場所を選ばない働き方が進んでいますが,それ以外のホワイトカラー労働者は,高い所得を得るためには,いくらでも都市部で働く必要がありました。

そこから一歩進んで,副業という形で,都市部に限らず地方もつまみ食いして働くことができるようになった人たちがでてきています。

 

経済活動の結果,こういった新しい働き方ができる人たちがでてきたことについて,特にいいも悪いもないのですが,地方創生を担当する自治体職員としては,こういった動きに安易に飛びつかないよう注意したいところです。

 

 

こうした都市部の副業人材が地方の救世主であるかのようにみなし,よく考えずに誘致促進事業や補助などを始めてしまうのが地方創生事業の悪いところです。

 

 

地方に住む人間として,うがった見方をしてみましょう。

地方の住民は地方に住むしかありませんが,これら地方で副業をする都市部の人たちは,うまくいかなければすぐに都会に帰ってしまうのではないでしょうか。

 

都会にかえる場所がある人たちを信用しきってしまって地域の未来を預けてしまうのは,余りに考えなしです。

「東京8割,地方2割」など,あまりに都合が良すぎます。拠点は便利な都市部にありながら,地方をたまにつまみ食いするのですから,楽しいはずです。

「地域の人に魅せられ」などといっていますが,実際に住み始める,または関わる期間が長くなれば,閉鎖的な人間関係にげんなりして都会に逃げ帰りたくなるでしょう。

 

takeaway.hatenablog.jp

 

 

自治体が考えなければならないのは,その土地で生業をもち,根を張って暮らす人たちの生活です。

この副業の流れで少しでも地方にお金が流れるのであれば悪いことではありませんが,やはりつまみ食いされているに過ぎないということを冷静に認識すべきです。

それを分かった上でただつまみ食いされるだけではなく,いくらでも都市部から人とお金を吸い上げるにはどうするか,したたかいるべきです。層で無ければ,つまみ食いするだけつまみ食いされて,ビジネスがうまくいかなくなれば都市部の人はすっと都会に逃げ帰ってしまい,何も変わらない地方が残されるだけです。

 

日経新聞の記事は都心部に住む記者の方が書いているのでしょうが,「人の心はきれいだけど遅れた地方に都市部が何かを施す」という意識を背景に感じます。


多分悪気があるわけでは無く,都会の人から見た地方はそんなもので,途上国にボランティアに行くような気持ちで地方のためになにかしたいと思ってくれているのは確かなのでしょう。
ただそれは,本当の地方を知らないからこその意識だと思います。

 

 

その意味でも,都会なくして地方の課題解決ができないとしても,その担い手にならなければならないのはあくまで地方に骨を埋める住民であり,地方公務員もその一員として,都会からのおいしい話任せの地方創生ではなく,解決できるのは自分たちしかいないという危機感をもって地方創生にあたらなければならないと思うのです。

それでは、スーパー公務員によろしく!