地方創生の鍵,民間の活力とはなに?

みなさん、こんにちは。

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地方創生の実現には,いわゆる「民間の活力」の活用が期待される,とよく言われます。

あまり私の回りではききませんが,「民の力」とも呼ばれるようで,「民の力を活かした地方創生推進の手引」(令和元年12月 内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事業局)というものもつくられています。

 

この「民の力」とは,手引きによると企業・NPO等の多様な民間主体を指すようです。

取組事業をみると,地域商社と連携した県内外に県産品の魅力発信を行った栃木県の事例,物流会社と連携して中規模な流通網を作成した滋賀県の事例などが並んでいます。

 

すばらしい取組なのかもしれませんが,「企業様に地方創生に取り組んでいただいた」というような違和感を感じてしまいます。

 

おそらく,企業への相当な金額の地方創生交付金自治体のお金が流れ込んでおり,そのお金前提で事業が行われた,言い換えればそのお金をもらえなければ企業は地域のためのその取組を実施しなかったでしょう。これは企業としては当然のことて,ビジネスとしてペイしない事業であれば,何の見返りも無しに実施するはずがありません。

 

こういった事業が,ずっと地方創生事業として自治体からの委託などを受け続けているのか,実施してみたら十分なもうけがでるので自走しているのかはこの手引きからは分かりませんでした。後者の,地方で自ら稼ぐ仕組みができるというのが,地方創生が目指す姿です。しかし,そもそも企業がもうからないと思って手を付けなかった事業に,地方創生交付金をつかって少し援助したため,非常によいビジネスが発見されて企業の事業として成立するようになった,といううまい話がそうそうあるでしょうか?

 

この「民の力」に限らず,地方創生の概念には,「地方にはまだ気づいていない魅力がある。それに気づきさえすれば活性化する」という根拠のない期待のようなものがあるように感じます。住民たちではそれに気づかないので,ここでいう「民の力」,特に企業に振り向いてもらえばそれが発見できるはずという期待もあるように感じます。

 

一方で,県職員というのは世間知らずなもので,「民」である企業やNPOについて正直分かっていません。地元企業のトップなどと良く合う機会のある県幹部などそんなことは無く,企業についてよく知っているということがあるのか私にはわかりませんが,机で地方創生事業の企画を練っている職員のほとんどはよく分かっていないというのが現状でしょう。

従って,県の職員は民間企業と協力して地方創生をしよう,とお人好しに考えてしまい,一方の民間企業はビジネスとして成立するならとっくに自らはじめているはずだ,という観点が抜け落ちてしまいがちです。

民間企業からすれば,地方創生関連の事業を受託されれば,役所のお金でほぼノーリスクでトライアル的な事業を実施できるため,こんなおいしい事業はないでしょう。

民の力を「活用」などと,上から目線の様な印象ですが,地方創生に案の内自治体が,民間企業に地方創生の事業費をうまく「活用」されているというのが実際のところではないでしょうか。何度も強調しますが,地方創生推進交付金事業はその2分の1は自治体が負担します。自治体にとってタダではありません。

この企業との連携事業がうまくいって,地方創生の交付金がもらえなくなったあとも続けばまだよいですが,それを機にビジネスとして成立しなくなり,企業はぱたりとやめてしまうこととなるため,今度は100%自治体の予算でその企業に委託して続いていってしまう恐れもあります。

この背景にも結局の所,地方創生と言われても何をしていいか分からないということがあります。職員が事業を思いつかないため,とりあえず「民の力」を活用,丸投げしてしまい,今後地域を担うつもりが始めからない企業にうまく交付金自治体のお金を吸い取られてしまったという例がこの手引きの優良事例の裏に山ほどあるのでしょう。

 

そういった観点からも,安易に「民の力」に頼る地方創生は考え物かと思います。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

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