インバウンド事業費が大手企業に食い物にされる理由

みなさん、こんにちは。

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都道府県という単位でインバウンド事業を行うのは最適ではないということを前回の記事で述べました。

 

takeaway.hatenablog.jp

 


「○○県」を海外からの旅行客にPRするといった,そもそもの目的がおかしいため,都道府県のインバウンド担当はどんな事業を行ったらよいか大変悩みます。


イデアがない場合は役所お得意の前例踏襲となります。

 

『そうか,君は課長になったのか』などの仕事本で有名な佐々木常夫さんの書籍に「プーアなイノベーションより優れたイミテーションを」という言葉があります。

地方創生やインバウンドに関して安易な前例踏襲のイミテーションの場合は、多くの自治体が行う似たり寄ったりの事業を生み出し,何の効果もなく終わってしまう「プーアなイミテーション」になってしまいます。

 

 

役所が何の案も持たない場合にとる便利な方法はプロポーザル・コンペなどの企画提案の募集です。

 

インバウンドですと,「アジア市場への○○県の認知度向上」といった「こうなったらいいな」という理想だけで埋められた仕様書で事業者を募り,コンペが行われます。

 

各県の企画提案の落札事業者を見ますと,交通系,広告代理店,航空会社,大手旅行代理店などのそうそうたる大企業やその企画系の子会社が事業を受託しています。

それらの大企業が,「○○県の認知度向上」のためにどんな事業を行うかというと,ほとんどが,自らの社が独自に行っている日本への誘客キャンペーンの延長でしかありません。


つまり,県の事業を受託しようが,しまいがもともとその社で海外からの誘客のために行っている大規模キャンペーンで作成しているWEB広告や雑誌などのコンテンツに少し○○県のことを載せたりするだけといったケースが多く見られます。

 

インバウンド関係の事業は1,000万円を超えることも多くあり,巨額の税金が大企業がもともと行っている事業の片手間の仕事に吸収されてしまっています。


県からの委託事業を請け負ってその1,000万円程度予算で個別に専門のプロジェクトが行われることはまずありません。

 

どちらかと言えば補助金や負担金を渡してPRしてもらっているという方が実態に近いのではないでしょうか。

しかし,これがもし委託ではなく補助金ということになれば,県のPRのために県外の大企業の補助をする合理性がなく,まず認められないはずです。

 

 

この県レベルでのインバウンド事業というのは,こうした大手代理店等に地方の税金を流し込むのがそもそもの裏の目的なのかと疑ってしまいたくなるほど意味の分からない状況です。


「世界にPRするなら予算もある程度大きくなるから大手企業で」ということで,在京の大手企業ばかり受託していますが,地元の配水の陣で経営している旅行代理店などに1,000万円を委託して地元に旅行客が来るように何か自由にやってみてもらった方がよっぽど可能性はあるのではないでしょうか。

 

コロナ前まで日本へのインバウンド客は増加傾向にあったため,県内への外国人観光客数などをKPIとする県のインバウンド施策は,本当は何も効果がなくても効果があったように便乗できたことも隠れ蓑になりました。

 

ほとんどの都道府県で,数年にわたり行われたPR系のインバウンド事業が丸ごとなかったとしても,現状は何も変わらなかったでしょう。


インバウンドにしろ,何にしろ,「都道府県は何かやらなければならない」という意識をまずなくしていかなければならないと思います。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!