地方創生推進交付金は地域の活性化に十分?

みなさん、こんにちは。

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地方創生という言葉は,県庁職員として働いていれば嫌でも耳に入ってくる言葉です。

所属内で回覧される新聞記事や自治体向け雑誌の記事には,「地方創生なくて地方の活性化はない!最後の手段!」といった趣旨のものが並びます。

自分の担当する事業が地方創生推進交付金の対象事業であった場合,まじめな職員の方であるほど,「よし,地域のためになにか画期的なことをやってやろう。乗り遅れたら大変だ!」と意気込むのではないでしょうか。

しかし実際のところ地域が活性化する仕組み作りは難しく,どこかの自治体の前例をもってきて財源と人的費が浪費される結果に終わってしまう例の方が多いでしょう。

 

ここで,一旦冷静になって考えたいのは,地方創生推進交付金は地方を活性化できるのにそもそも十分な金額を備えているのかという観点です。

たとえば,令和2年度の地方創生推進交付金のメニューはいろいろと種類がありますが,より先進的な取組が必要となる分金額が大きい「先駆タイプ」について,都道府県への交付上限は3億円です。地方推進交付金を使った事業は,半分は国からの交付金,半分は自治体のお金で行うため,仮に3億円の交付金をもらった場合,総事業費は6億円になります。

6億円もあれば大変大きな事業ができそうですが,ここで地方創生事業として国から認められる「事業」とは,役所の中の様々な部署の細かいいろいろな事業の詰め合わせになっているということに注意が必要です。6億円の規模の大きな投資が地域に行われる訳ではありません。

実際には,この6億円が観光振興・農業振興・商店街振興などなど,総花的な自治体の中の様々な部局の事業に分配されます。これらの細かい事業は交付金を獲得る時点では,国からみた場合の1つの目的をもつ事業となるべくまとまっていましたが,実際事業が始まると,各部局が地方活性化のための1つの目的を達成するために他の事業と連携するということはまずありえず,自分の部署の事業のみを進めていきます。自分の事業に一生懸命であるものの,または,そうであるために,すぐ隣の部署が何をやっているか,わからない,関心がないという職員が多いという実感です。

さて,分配され,実際に各所属で行われる事業は,国からの交付金分と自治体の予算を合わせてもせいぜい高くて5,000万円程度でしょう。とはいえ,職員が手弁当でいろいろと必要な発注を行い,事業管理して事業実施するにはどう使うのかも分からないほど大きい予算なので,積算も不確かなまま,「5000万で古民家を活かした地域再生を何かやってもらうか」といったように,なんとなく東京のコンサルなどに丸投げしてしまう自治体がほとんどというのが現状でしょう。

 

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また,現場での1事業に5,000万円もとれればかなり良い方で,1,000万~2,000万円の事業がほとんどです。そのお金でやりっぱなしのPRイベントなどを実施し,地域にお金が回るサイクルをつくろうというのが,そもそも無理なことではないでしょうか?

 

自治体の地方創生を担当する意欲のある職員の方にこそ,地方創生と冠のつく事業に取り組む前に,そもそも「このお金で地域の再生ができるのか?」ということを一旦立ち止まって考えてもらう必要があるのではないかと思います。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!