公務員の採用担当者が気付いていない在宅勤務のメリット

みなさん、こんにちは!
今回も在宅勤務の話しです。
地方から県庁に通っている職員として、在宅勤務が根付いて欲しい、という思いが強く、とりあえず在宅勤務についていいたいことを書いています。

前回記事の続きですが、在宅勤務が選択肢として増える、というのはできない場合よりもプラスになるはずです。
単純に私のような長距離通勤者は通勤時間だけ自分の時間が増えるメリットがあります。

長距離通勤者でなくとも、なんだかんだ通勤や出勤準備ででみな1日1時間30分くらいはかかっているはずなので、その時間が自由になります。

これは普通の企業で考えたら、勤務条件のメリットだと思いますが、自治体の採用の現場ではまだまだこうした点を押し出せていないようです。

例えば、以前の記事でも紹介した「地方公共団体におけるテレワーク推進のための手引き」の中で先進自治体として茨城県が紹介されています。
茨城県はいち早くテレワークを導入し、その端末もタブレット端末まであるという充実ぶりのようですが、2021年の採用パンフレットを見てみると、テレワークがあります、という点をそれほど押し出してはいません。

各職員の話の中で「テレワークを使っています」とは出てきていますが、巻末の勤務条件のあたりにバーンと「テレワークを推進しています」と書いてもよいのではないかと思います。

一方で同じく手引きの中に出てくる神戸市はフレックスタイムを導入しているといううらやましい自治体ですが、こちらのパンフには「働き方改革の推進」ということで、「在宅勤務」「フレックスタイム」がきちんと特集されています。

ちなみに、神戸市は地域貢献応援制度という、公務員が地域のために働いて報酬をもらえる制度もあるようで進んでいますね。

 

神戸市パンフリンク

https://www.city.kobe.lg.jp/documents/13097/saiyougaide_20220210.pdf

 

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うちの県ですと、在宅勤務はできるようになっていますが、採用冊子では全く出てきません。

おそらく、働き方改革の部署と採用の部署は別のため、働き方改革の取り組みを採用に活かしていく発想がうまれていないのだと思います。

人手不足もあって、採用難だと聞きます。

動画を作ったりといろいろ採用関係の部署もがんばっているようですが、その予算があったらどんどん庁内のフリーアドレスを進めるなど、就職したいという環境づくりをしていった方がいいでしょう。

最低でも在宅勤務、フレックスタイム、フリーアドレスの3点セットくらいなければこれからのオフィスとしては選ばれなくなっていくでしょうね。

そうした採用の観点からも、在宅勤務はメリットがあるのでどんどん進めていってほしいです。

それでは、スーパー公務員によろしく!

県庁職員こそ在宅勤務を! 在宅勤務をしたことのない人がまだ気付いていないこと

みなさん、こんにちは!
なかなかオミクロンの感染がおさまりませんね。

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さて、このブログはもともと県職員向けとしてスタートしていますが、みなさん、在宅勤務していますか?
市町村の方などは窓口業務などで在宅勤務は実質できない、という感じかもしれませんが、県の職員の特に事務で現場に出ない仕事だと、よっぽど現場にばかりでたり住民から電話ばかりかかってくる部署でなければ、在宅勤務ができないということはないのかなと思います。
いろいろと内部的、外部的な理由をつけてなかなかできていない、という方はもったいないです。

というのも、世の中在宅勤務ができない仕事の方が多いです。
在宅勤務ができるというのは、1つ特権のようなものです。

必ず出勤しなければならない仕事と、出勤しても、家で働いてもどちらでもよい仕事のどちらがいい勤務条件でしょうか。

在宅勤務がコロナで始まった関係と、これまでの出勤に特に公務員社会は慣れきっているので、在宅勤務が必要悪のようになっていて、それによってこの制度を使う人が少ないのは本当にもったいないと思っています。

このままでは、コロナが収まって在宅勤務がなくなりはしないでしょうが、よっぽど稀に、または制度だけあるという状態になってしまう可能性があります。

在宅勤務ができるのは、一部のホワイトカラーの特権と言えるかもしれません。

ホワイトカラーでありながら、勤務地において少し自由になっています。

在宅勤務というのはただではありません。

通信環境、セキュリティーの確保など、相当なコストがかかります。

雇用主がそれだけのコストを負担して在宅勤務が許容されているというのは、労働者側からすると、勤務条件としてプラスととらえるべきでしょう。

2022年2月8日付日経新聞に「ライフファースト族こう働く」という記事がありました。
リモートワークで共同作業する会社の従業員が首都圏を離れ、自分の暮らしを優先しながら仕事をする、という事例が紹介されています。

この人たちは個人事業主ほどの自由はないにせよ、オフィス勤務のホワイトカラーワーカーよりは自由な人たち、という新たなワーカーです。

幸運なことに県職員もそこまではいかなくても、在宅勤務くらいは許されるようになってきたのですから、使わない手はありません。

地方在住の県庁通いの県職員としては、県庁職員が便利な県庁所在地に偏住する状況は、地域体験がなく、地域住民の間隔とかい離する職員が増えてよくないと考えています。

県職員こそどんどん在宅勤務をして、地方に住んで欲しいと思います。

県庁近くで食べている昼食を週1、2回在宅勤務して地元で食べるだけでだいぶ違ってくるのではと思います。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

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母親の罪悪感”マミーギルト”記事に感じる違和感 「子どもを犠牲にしている」と感じるのは”呪文”なのか

みなさん、こんにちは!
2022年2月21日の日経新聞に「マミーギルト」という聞きなれない言葉が特集されていました。
日経新聞では月曜日に働く女性のための1面をつくっています。

  • マミーギルトって?
  • コロナで増えた
  • 私の場合
  • マミーギルトは呪文?
  • 女性は絶対に働くべき?
  • 逆に専業主婦キルトを作っていないか?

 

マミーギルトって?

マミーギルトとは、次のようなことを指すそうです。

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公務員がテレワークをする最大のメリット~テレワークで1日だけジョブ型雇用体験~

みなさん、こんにちは!
オミクロン型が猛威を振るっています。
コロナ対策の観点から、さすがに役所も重い腰をあげて、テレワーク推奨ということになった職場も多いのではないでしょうか。

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とはいうものの、掛け声ばかりで実際の利用は進んでいない、という職場がほとんどかと思います。

コロナ対策の側面からやむをえず、といったニュアンスで捉えられがちなテレワークですが、本来はホワイトワーカーにとって、より自由な働き方ができる大チャンスであるはずです。
これまで、単純に、出勤前提だったところが、出勤しなくてよくなるわけですから、それだけでも大きなメリットです。

安定しているものの、あまり給料が高いともいえない公務員は福利厚生が魅力の一つ。
その一環として、テレワークがもっと自由に選べたら、だいぶ大きなメリットとなるかと思います。
公務員がテレワークをすることがあたりまえとなるよう、どんどんみんなで利用して浸透して欲しいものです。

出勤しなくてよいことのほかに、テレワークの良いところがもうひとつあります。
それは、勤務時間中は必ずしもずっとPC画面にかじりついていなくても良い、ということ。

テレワークで誰も見ていないからさぼってもいい、ということではありません。
職務専念の義務があるので勤務時間中は仕事をしなければなりませんが、テレワークでは自分で決めたその日のノルマをきちんとこなせるのであれば、職場にいるときに比べて比較的自分の裁量で時間を使えるということです。
職場では何かを考える時間を取るのが難しいものです。働いている=常にPCに向かって何かをしている姿を見せ続けるというイメージです。テレワークでは終始監視されているわけではないので、関連する本を読んで考えてみたり、ノートにまとめてみたりと、職場でやればさぼっているように見られがちな、発想のための作業をすることが実際はできます。
これを職専免違反だ、といってしまうのは簡単なのですが、少し寛容な見方をしてみてもよいかと思います。
つまり、テレワークでは、勤務時間に縛られるのではなく、特定の仕事をこなすことを目的にするジョブ型雇用的な働き方をする、という考え方です。

 

このごろ日経新聞でも頻繁にジョブ型雇用の記事が出ています。
ジョブ型雇用とは、工場などでの労働を前提とした勤務時間中に労働しつづけ、時間で管理される従来型の雇用ではなく、採用時に自分の業務がきちんときまっており、それをこなせばよい、という雇用形式です。
これがテレワークと大変相性がよいこともあって、大手企業などではジョブ型雇用が拡大しているそうです。

公務員の雇用形態は当然従来型雇用であり、勤務時間中は働き続けなければなりません。
一方で、「時間中席にいればそれでよい」という考え方が、公務員の非効率な働き方につながっているのではないかとも思います。
それよりかは、自分でどの仕事をいつまで終わらせるかマネジメントするタイプの職員の方が、実際に手を動かす時間が少なくても役にたっています。

自分でマネジメントできるタイプの方は、どんどんテレワークし、公務員でありながら勝手にジョブ型雇用のような働き方を実現していく、というちょっとした工夫をしてもよいのではないかと思います。

実際のところ、職場に来た方がいいという旧来タイプの職員がほとんどなので、テレワークはいい顔をされません。
しかし、地方公務員などでは特に今後優秀な職員を確保したいのであれば、どんどんテレワークを推進し、それぞれに合った働き方ができるとアピールしていかないといけないと思います。

いずれにせよ、テレワークの流れをコロナ対策だけでとらえて、コロナが終わったらテレワークも終わりとなるようでは非常にもったいないなと思います。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

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老人向けのイベントばかりの町内会に未来はあるのか

みなさん,こんにちは!

これまで地域の町内会の活動に触れる機会がありませんでしたが,自分が地域に定住するようになって,町内会の資料などを目にすることが増えました。
うちの町内会ですと,500世帯ほどが集まり,各世帯年6,000円ほどを収めています。
その他,町からの補助金などもあり,500万円ほどの予算規模で運営されています。

事業計画をみてびっくりしたのが,驚くほどお年寄り向けイベントばかりであったこと,
また,結構な金額が地域の社会福祉協議会や敬老会への負担金になっています。

県庁所在地ではない地方都市に住んでいますが,うちの地方では空き家を取りつぶしたスペースに所得の低い若者でも購入が可能な大きくない一戸建てが複数建つ,といった区画が多く,子育ての世帯意外とたくさんいます。

そんな中,せっかく収めた町内会費がほぼお年寄りたちのためのレクリエーションの会などにしか使われていない状況では若者の地域への関心を失わてもしかたありません。
一応子供向けの餅つき大会なども企画されていますが,子供のいない夫婦の世帯など向けのイベントは皆無です。
若い世代にとっては,元から住んでいる老人たちを養うために払わざるを得ない場所代のような趣さえあります。

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今回はコロナで総会も開催されない,ということで意見表明の場がなかったということもあり,私も意見を言う機会すらなかった状況でした。

若者にとって田舎がつまらない,といいますが,まず自分たちに一番近い町内会からしてお年寄りだけで回っているという状況ではどうしようもないなと思います。

例えば子育て世代であれば,地域でよくイベントが開催されるなど,町内会活動が活発で悪い思いをする人は少ないかと思います。

実際子育て世代は共働きで忙しく,町内会の運営などは日中に時間のあるお年寄りにやってもらう方がいいかもしれません。

それでも,町内会側も地域の若者の意見を聞こう,という視点があっていいと思います。

こういったことが起きているのも,ずっと地域に住んでいるお年寄り層と,新興でやってきて地域の琴に関心の無い子育て世代層がはっきり分かれてしまっているということかと思います。

回覧板なんかもLINEを使ったりとか,集金にPayPayを使ったりとか,今の時代に合わせたやり方もいろいろあると思うんですけどね。

こういうのも地方が遅れていて都会の自治会は進んでいるんでしょうか。

来年は総会が開催されるといいなと思います。

それでは,スーパー公務員によろしく!

年休を全部とる! 年休を取れない人がまずやるべきたった一つのこと

みなさん,こんにちは!

働き方改革が唱えられる今日この頃ですが,年休全部取得できていますか?

 

地方公務員の年休は基本的に20日。

しかし,実際の所,これに夏休みなどもあるので,年休をすべてとるのは意外と大変だったりします。

年休を全て取るコツは,とにかく,全ての年休をカレンダーに落とし込んでみること。

これができないと,なんだかんだと休むタイミングがつかめず,必ず余します。

よく年休付与月の直前の月に年休消化しようとする人もいますが,残り1ヶ月で気づいてもとれる日数には限界があります。

とはいっても1年のカレンダーに20日の休みを取るのは慣れていないと途方に暮れてしまいます。

そんな方はとりあえず次のような取り方を参考にしてみてはどうでしょうか。

1 自分の誕生日
 自分の誕生日は年に1回。この日くらいは休みましょう。

2 家族の誕生日
 家族の誕生日も年に1回。家庭を持っている方はお子さんはもちろん奥さんや旦那さん,一人暮らしの方は離れて暮らす親御さんの誕生日に休むことにしてもよいかもしれません。

3 記念日
 何か家族の記念日などは休むことにしましょう。旦那さんは結婚記念日に休むことにしておくと忘れません。

3 連休の中日
 火曜日が祝日だった場合の月曜日など,そこ1日だけ休めば連休になる1日は休んでしまいましょう。どうせ1日だけ休むなら,連休ができるとお得です。

4 御用納めの日
 休みをとるのが気まずいという方は,年末の御用納めに休んでみましょう。まわりもお正月明けには休んだことを忘れてしまい,気まずさが軽減されます。

5 クリスマス
 いろいろとイベントも多く,「休みを取っておいてよかった」となる日です。御用納めも含めて,年末は休みが取りやすい雰囲気があります。

6 6月の平日
 祝日のない6月は疲れてしまいがちです。2日ほど休みをとりましょう。

7 自分の趣味の日
 平日は宿が安いなど,平日しかできないこともあります。事前に計画できていれば,休みを入れてしまいましょう。
 映画が好きな人は1日の映画の日に休む,というのもいいですね。

8 余った分は3連休のための金曜日休み
 上の休みをカレンダーに入れてみて,それでも年休が余っている場合は,休みの少ないところの金曜日を休みにしていきましょう。

1年を見渡して年休を事前に計画して,必ずその日は休む,そのために仕事をマネジメントする,くらいの気概がなければ年20日の年休を全て計画的に取得することはできません。

ただ自分の仕事の効率をよくしよう,とぼんやり思っていてもなかなかできません。

ステマティックに年休をカレンダーに落とし込んでしまい,それをすべてとれるように工夫する,そんな方法で形から入って働きかたを変えていってみてはどうでしょうか。

それでは,スーパー公務員によろしく!

 

 

なんちゃってデジタル化が目に見える! 地方創生推進交付金にデジタル要素追加

みなさん、こんにちは!
岸田首相が掲げるデジタル田園都市構国家想の関連で、今後地方創生推進交付金にデジタル活用が条件となるようです。

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もともとは、地域で何か事業を担うキーパーソン、組織が育ち、自走することを目指した交付金です。
その目的を達成する事業であるために地方創生推進交付金にはいろいろな条件がついています。
そのため、申請の際には、「どうやって自走していくか」「どうやって地域で事業を担う人材を育てるか」といったことを書く必要があります。
しかし、そこにはからくりがあって、地方創生推進交付金を使って行う事業すべてがそうした条件を満たす必要はありません。

例えば、所属で2000万円ほどの移住促進事業を地方創生推進交付金を使って行いたいとします。
申請の調書を書いていくに当たり、「民間企業等との連携」といった条件がどうみてもこの事業では満たせないとなっても慌てる必要はありません。
最小単位のいわゆる事業がいくつかまとまって「パッケージ」になり、その事業が束ねられたパッケージ全体で各条件を満たせばいい、ということになります。

いってみれば、本来の地方創生の目的を単独では達しがたい事業も、他の事業と束ねられることで地方創生推進交付金を使用できます。

もともと地方創生推進交付金はこのようにばらまきのようになってしまっているため、今回のデジタルの条件が付いたからといって、これがきっかけで地方でのデジタル化が進むということはないでしょう。
せいぜい、「なにかデジタル要件が必要だな」ということで、チャットボットの活用や、AIマッチングといった、必ずしもすべての事業に必要とは限らないなんちゃってデジタル要件が各事業で付け加えられる程度ではないでしょうか。

問題なのは、地方創生推進交付金のデジタル要件のアリバイ作りのために、チャットボットの活用や、AIマッチングといった本来不必要なことに委託費などが使われてしまう無駄でしょう。
そんなことをするよりも、適当に「twitterで専用アカウントを作成し、随時職員が自前で情報発信」などということにして無駄な委託費をかけないほうがよっぽどましだと思います。

本当にばらまきはなくらならないのですが、ばらまきを得るために無駄な手間がかかるというのもまたなんとも面倒なものです。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

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モチベーションアップで何か読みたい公務員におすすめの公務員お仕事本は、実際にやった人が語る本~『後世への最大遺物』より

みなさん、こんにちは!
年末年始の休みが近いですね。
一年間おつかれさまでございます。

ストレスの多い公務員の皆様は、モチベーションを維持し、心身共に健康に働くということは、とても重要です。
その手段の一つが、公務員関係のお仕事本を気軽に読むこと。
この休み中に何か一つ読んでおくか、という方もいるでしょう。

このごろはたくさんの公務員のお仕事本が出ているのでどれを手に取るか迷いませんか?

 

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おすすめなのは、実際の体験談を本人が語るタイプのもの。

当ブログでレビューした「ライク・ア・ローリング公務員」や「もしわたしが株式会社流山市の人事部長だったら」はそのタイプです。
結局、「人」が見えるので読みやすいということが一つ。
実際にやった人が語っているので、説得力があります。
たまに「上司へは7割で報告する」といったコツだけならべてあるタイプの本がありますが、私の経験上、その時はいいけれどあとに残りませんね。
それよりも、本人たちが山あり谷ありの人生を語るタイプの方が、「こんなやり方もあるのか」とモチベーションを刺激する効果は強いと思います。

前に、人が入っている広告と、人が入っていない広告では人が入っている広告の方にどうしても皆目がいってしまうという話を聞いたことがあります。
人に注目してしまうのは本能的なもののようです。

結局は同じようなことが書かれていても、それが実際にやった人の口から語られるのと、要素をそぎ落とした結論だけならべられるのでは、全く心への響きが誓います。

内村鑑三の『後世への最大遺物』の中でも、何を後世に残せるか、ということで、お金、事業などなど挙げてゆき、誰でも残すことのできるものは「高尚なる生涯である」と言っています。

「背中が語る」という言葉もありますが、結局人は他の人がやってることをみるという形が、自分も一番刺激を受けるのかなと思います。

ちなみに、この『後世への最大遺物』は短くてすぐ読めるので、お仕事本、自己啓発本を探すのも面倒だなという方はこの本を読んでみると内村鑑三の熱量に圧倒されて最高のモチベーションアップになるかもしれません。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

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『もしわたしが株式会社流山市の人事部長になったら』感想④ 子どもを一時保育に預けてまちづくりに参加するお母さんはひどい?

みなさん,こんにちは!
「もしわたしが株式会社流山市の人事部長になったら」(木樂舎)の感想続きです。

今回は,子育てをしながらの地域活動について考えてみます。

この本は,図書館だと「公益企業」に分類されていますが,人材マネジメントの本でもあり,まちづくりの本でもあります。
また,子育てとまちづくりの両立,働く女性とまちづくりに関する本ともいえます。

著者で株式会社WaCreation代表取締役の手塚さんは,もともとリクルートの社員で,流山市に住みながら都内に通勤していました。その中で,地域貢献が仕事にならないかと思い立ち,いろいろと活動をした後まちづくり事業を担う株式会社を立ち上げています。

手塚さんの会社は流山鉄道の駅前で観光案内所兼コミュニティーセンターmachiminを運営しています。
いろいろな方が立ち寄って,活動に関わっていくことになりますが,やはり平日動ける人は女性,シニア,学生が多かったとのことです。
machiminには普段都内ではたらくお父さんたちにも経験を活かして関わっていきますが,やはり普段はお母さんたちなどが多い。

その中で,machiminの行事に参加するお母さんが小さい子供を一時預かり施設に預けて参加した,というエピソードがありました。流山辺りだと,そんな開けた考えの人たちがいるのだ,都会だなぁとと衝撃を受けました。
私は完全に閉鎖的など田舎ではなく,人口10万くらいの地方都市に住んでいますが,そこでさえもこういう行動ができる人はいないと思います。
「こどもがかわいそう」と非難する人もでてくるかもしれません。

手塚さん自身も子育てしながらの活動であったため,子供をだっこしたままイベントのビラ配りをしたそうです。
その際にやはり,「こどもがかわいそう」と見知らぬ人に言われたとのこと。
一方で,流山市役所のスタッフは「これからはこういうお母さんの姿が当たり前になる」と応援してくれたとのことです。

地域のお母さんたちに限らず,お父さんたちも,とにかく子育てに忙しく,子供の面倒をみるので精一杯で地域活動などとてもとてもという状況かと思います。

しかし一方で,都会の方に行けば行くほど,一時預かりを利用したり,子育てとうまく折り合いを付けながら,自分のやりたいことをやっている親御さんたちがいる,ということでしょう。

自分がやりたいことをするために子供を預ける,というのは,日本の慣習的にはなじみがなく,抵抗が多いでしょう。

しかし,所変われば文化も変わるもので,イギリスなどでは全く当たり前のことであったりします。
言わずと知れた名作映画『男と女』でもこれは一時預かりと違いますが,こどもはとっとと寮に預けてしまって,自分たちの恋愛を楽しむ男女がでてきて,初めて見たときは驚きました。

こうした子育ての文化の違いについて,『イギリスのいい子 日本のいい子』という本にあった例がとてもわかりやすかったです。

あるイギリスを旅行中の子連れ日本人夫婦のホテルでの体験が紹介されています。
小さな子供をもつ夫婦がイースター休暇にしゃれたホテルを訪れ,連泊することになります。
一日目は子供同伴で食堂で子供も大人と同じようなものをたべましたが,二日目の朝,「”お子さんの”食事の時間は何時にしますか」と聞かれます。
夫婦は何を聞かれているか分かったのですが,どうも子供だけ一人で早く食事をし,大人の食事の時間は子供は一人で部屋で待っていなければならないということだと分かります。
夫婦は困りましたが,どうしてもそうしないといけないとのことで従いました。
その日は先にこどもの食事の時間となり,いってみると大人用とは違うお子様向けメニューがきちんとだされましたが,一人だけ食事することになれていない子供は大暴れし,夫婦はほとほと疲れてしまいました。こどもを部屋に残しておけないので,自分たちも夕食は掻き込むかたちとなります。
その次の日はこどもが一人の食事でぐずらないよううまく工夫してなんとかやってみると,食事後に子供はよく眠り,自分たちも出産後はじめてと夫婦2人の落ち着いたディナーをとることができたということでした。

この「イギリスのいい子 日本のいい子」のように,他の国の文化の謎解きをしてくれる本はいろいろな考え方がわかって大変おもしろいですね。

日本ではこども一人で食事させて大人はあとで,など言語道断という感じがありますが,子育てしながらも大人は大人の時間を大事にするイギリスではなにもおかしなことではない,ということです。逆に,大人の時間に子供を連れてくる方が嫌な顔をされるとのことでした。

どちらがいいという話でもなく,いろいろな考え方があります。

またボストン市庁舎の話になり恐縮ですが,とにかく「多様性」大事だと強調されていました。
子供を一時保育に預けながら自分も大事にする親御さんがいて,またそうした人がまちづくりに参加してくれるのは本当は地域としては避難すべきではなく,歓迎すべきことではないでしょうか。
そんな懐の深いまちになるといいですね。

それでは,スーパー公務員によろしく!

 

 

 

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』感想③ 都会にはなくて田舎にある唯一のもの

みなさん、こんにちは!
『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』の感想続きです。

今回は、都会にはなくて、地方にあるものは何か、という話です。

さて、この本の作者手塚さんの会社WaCreationが運営するコミュニティースペースmachiminは流山市内外の人が「好き」なことをまちづくりに活かしてもらおうと、ひととひと、ひとと地域を結び付けていきます。
そうすると、「自分のこんな特技が何の役に立つのか」と思っていた人たちが、それを地域に還元し、地域の中で居場所を得ていきます。

日経新聞の特集記事で「令和のロスジェネ3 さよなら東京」という記事が思い起こされました。
コロナでオンライン授業が続く中、地域に関心を持つ若者たちが増えているそうです。
意外と地元もいいかもと見直し、東京での就職から地元への就職に切り替えた学生。
また、宮崎県日南市(人口4万9千人)の地元メディアが地域体験プログラムを企画し、大都市の大学生14名ほどが参加し、地域の地元企業でのインターンで充実した体験をしているとのことです。

流山市の自分のまちづくりに関わってみたいけれど一歩踏み出せない市民しかり、都会の大学生しかり、世の中には結構居場所を探している人がいるものだな、と感じました。
競争の激しい都会など、今の場所では何者でもないけれど、地方にはその人の活躍の場がしっかりあるというケースは結構あるのかもしれません。
この本の人材マネジメントをまちづくりに活かす視点からすると、日本全体で、東京などの大都市圏に人材が過多に集中し、本来能力のある人たちが生きがいを感じられないというとてももったいない状況。
その方たちが地方に戻ってくれば、人的資源活用の観点からも最適化するし、当人たちも自分の居場所が見つけられる。

本来、地方創生はこれを目指してるんでしょうね。
若者を中心に一定期間地域おこし協力隊として地域に移住し働いてもらう取り組みも同じ狙いです。
財源の問題などもありますが、とにかく一極集中を是正するのは個人的には大いに結構だと思います。


田舎には何もない、などといいますが、場合によってはそれぞれが地域で担う役割だけはある、と言えるかもしれません。


それをmachiminの参加者のように自分の居場所と肯定的に捉えられればしめたものです。

 

ただ、流山市などは都内も近いのでいいのですが、他の地方はやはり最終的には移住しようにも教育レベルが問題ということにはなってくるので、きれいごとでうまくいかないかと思います。
これはまたあとで整理して書きたいと思います。

 

とはいえ、都会で何の生きがいもないなと思うのなら地方に来ると自分の存在感の濃度はぐっと上がることは確実です。
鶏口牛後というと語弊があるかもしれませんが、何か誰かに必要とされたいなと悩む方は田舎に来て地域の活動に参加するのもありかもしれません。

(あまり閉鎖的な地域だと必要とされすぎて困るかもしれませんが。)

 

私自身県庁所在地に住んでいた時よりも、田舎の地方都市に家を買ってはじめは不安でしたが、今は地に足がついて、安定してきた感覚で地域のために何かしたいな、という気持ちも起こってきています。

 

ともかく、田舎暮らしも悲観するばかりではなく、いい部分もみて楽しくやっていきたいものですし、都会暮らしに圧倒的に劣るというのではなく、一長一短くらいで考えていける時代になってきたと思いたいです。

 

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』感想② みんな嫌だけどけどまちづくりにどうしても必要なもの

みなさん、こんにちは!
前回に引き続き、『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』の感想です。
いろいろひっかかる部分の多い本なのですが、『ライク・ア・ローリング公務員』に比べて記載が緻密で分量もあるので読む方は少し肝を据えて読んだ方がいいかと思います。
(作者の福野さんの奈良弁で語られる『ライク・ア・ローリング公務員』が異常に読みやすいだけかもしれませんが)

さて、『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』は、まちづくりをおこなう株式会社Wacreationの立ち上げまでとその活動の話です。
代表取締役の手塚さんは、リクルート出身で人材マネジメントのプロです。
そのため、非常に戦略的・合理的な思考をしています。
もともと株式会社Wacreationは手塚さんが立ち上げましたが、手塚さんの属人的なものにしないようスタッフを育成し、手塚さんなしでも市民に受け入れて活動できるようにすることを見据えています。
手塚さん自身は謙虚な方で、皆でつくっていると繰り返し書いていますが、やはりそもそもこの活動がここまで来れたのは、手塚さんがいたからだと思います。

 

 

ここで、すごく優秀な人がたまたまいた流山市は幸福でしたね、と言いたい訳ではありません。


手塚さんはとびきり優秀だったのだと思いますが、いずれにせよ、まちづくりを進めるには、だれかがマネージャー役を引き受けてひっぱっていかないといけない、ということです。
machiminが行ったのも、まちづくりに参加したいと思っているけどなかなか踏み出せないでいる市民を結びつける活動です。
それぞれ眠っている才能を発掘して、まちづくりに参加してもらう。
「個人の「好き」の社会化」と紹介されていましたが、まさに手塚さんが先行されていた人的資源管理そのもので、人材(市民)を会社(流山市)のために適切に使っていくことでまちを魅力的にしていきます。
自分のまちがよくなったらいいな、と思っている人は結構いるかと思いますが、それだけでは具体的な動きにならなくて、それを誰かがおせっかい役となってまちづくりに呼び込んでつなげていく必要がある。

手塚さんも、冷蔵庫の中にある材料をみて、どんな料理を作るかに似ているといっています。
それぞれの材料が、料理になるためには、料理人が必要ですが、まちづくりにはひとを結びつけるマネージャーというか、世話焼き人が必要ということかと思います。
いってしまえば、みんなに参加してもらうためにはだれかが全体の面倒をみないといけないということです。


面倒な損な役回りのようですが、捉えようによっては全体をコーディネートするマネージャーでもあり、編集者のようなものです。
外山滋比古さんの名著「思考の整理学」にもエディターズシップという言葉がでてきて、ここでも料理人の例が引かれるのですが、マネージャーも今あるものから新しい価値を創造するクリエイティブな仕事という意味で編集者と同じです。

 

AIに仕事が奪われる、などと言われますが、誰かと誰か、何かと何かを結びつけて新しいものを生む仕事は、今後価値が高まっていくかと思います。
面倒なので誰もやりたがらないけどみんなが実はだれかやってくれないかな、と思っている仕事です。

手塚さんのような「株式会社流山市の人事部長」とまでいかなくとも、たとえばPTA会長、町内会の役員、はたまた所属の親睦会の幹事長まで、こういう仕事は面倒がられますが、絶対になくてはならない仕事ですね。

今年ベストセラーになった「人新世の資本論」などの中にも、今後は誰かの面倒を見るケアといった分野が重要になる、という話がありましたが、これまで面倒がられていたこれらの役割の重要性は見直されていく必要があると思います。

 

各地でまちづくりが進まないのも、第一には手塚さんのように、「自分がまちづくりについて本気で考えよう、面倒なことも引き受けよう」という市民がまだまだ少ないのが原因でしょう。

 

映画『ボストン市庁舎』でも見られたように、皆で意見をすり合わせて何かを進めるというのは面倒なことですが、そうするしかないものです。
市民もそうですし行政も、その面倒なことを引き受けていくことで、いいまちがつくっていけると思います。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

 

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『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』感想① 「もし、まちを良くしたい子育てママがドラッカーのマネジメントを読んだら」というタイトルでもいいかもしれない

みなさん、こんにちは!
『もしわたしが「株式会社流山市」の人事部長だったら』を紹介します。
先日紹介した木楽舎の「ライク・ア・ローリング公務員」の巻末に書名が載っていたものです。

まず、このタイトルから多くの方が、流山市役所の人事部の話だと思うのではないでしょうか?
そうではないのです。
このかなりひねったタイトルを理解するには、少し説明が必要です。

まず、この「わたし」の作者の手塚純子さんは流山市にある株式会社WaCreationの代表取締役です。
株式会社WaCreationの事業内容はWEBページをみると、
まちづくり事業(人材育成、コミュニティデザイン、企画プロデュース、リビングラボ、菓子製造、喫茶営業など)
となっています。
つまり、この本は主に株式会社WaCreationの行うまちづくり事業についての話、となります。

それがなぜ「株式会社流山市」でさらに「人事部長」ということになるかというと、そこに作者の手塚さんの独特な街づくりに対する考え方があります。

流山市全体、これは流山市役所ということではなく市民全体を仮に一つの株式会社流山市の社員とみなす。
そして、手塚さんがその人事部長となって、会社の人事部長が人材育成を行うように市民を人材とみなして育成していく。
それによって株式会社流山市が育っていく、つまり、流山市が魅力的になっていく。

という、「市民を人材ととらえ、まちづくりに人材育成マネジメントの考え方を導入する」一見突飛な考え方に基づくタイトルなので、一見して意味がとれないのも納得です。

実は手塚さんは学生時代アメフト部のマネージャー時代にドラッカーのマネジメントを読んで組織マネジメントを実践という、「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」、いわゆる『もしドラ』を地でいった人です。
また、ゼミは人的資源管理を専攻し、その後リクルートでバリバリ働いていたというご経歴。
そういう意味からも、この本は「もし、まちを良くしたい子育てママがドラッカーのマネジメントを読んだら」というタイトルにしてもあながち間違いではないかもしれません。

子育てをして育休と復職をするなかで、


「地域活動を仕事にできるのか、約1年間の育休中に確かめて今後の働き方を決断しよう」

と思い立ち、1年という期限を決めて活動していく中でいろいろあり、市民団体としての活動などには限界を感じて株式会社を立ち上げることになります。
コミュニティースペース兼観光案内所であるmachiminを主に運営する形で、まちづくりを行っていきます。

手塚さんが徹底しているのは、まちづくりのために人材育成をする、ひとを育てるということ。
machiminにはいろいろな人が訪れますが、地道にイベントを開催し、知り合った人の「好き」をまちづくりに活かす形で次々と活躍の場を作り、人の輪を作っていきます。
machiminの実際の活動が多く紹介されていますが、それに関わるスタッフや市民の方の人柄が細かく紹介されていることからも、手塚さんが本当に人のつながりを大事にしているんだな、ということが分かります。

『ライク・ア・ローリング公務員』で紹介された公務員の福野さんもそうですが、やはり地域づくりをしようとすると、人づくりしかないのだなとこの本でも思い知らされました。
あとは、はじめからものになるイベントや事業はなくて、ひたすらトライアンドエラーを繰り返すしかないということ。

人づくりとトライアンドエラー。地域振興やまちづくりの本質はこれだといってしまっていいのかもしれません。

ちなみに、この本はうちの地元の図書館では日本十進法分類法では「335.8公営企業」に分類されています。
しかし、中身を見ると、一筋縄ではいかない内容です。
まちづくりの本でもあり、手塚さんがmachiminの在り方に苦悩しながら進めていく様子は経営学の本でもあり、人材育成の考え方が学べる人材マネジメントの本でもあります。

本の概略はこんな感じです。

次回は個々の話題からレビューを続けたいと思います。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

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ボストン市庁舎感想⑤ 追いつめられがちな若手公務員のメンタルを救うひとこと

みなさん、こんにちは!

前回、映画ボストン市庁舎を引き合いに出しながら、住民や関係者との調整などの面倒な業務で仕事が進んでいないように感じても、それ自体が民主的なプロセスであると考えれば、仕事が進んでいないと思い悩む必要はないのでは、という話をしました。

 

私はボストン市庁舎を見ながらこの考えが浮かびましたが、これに限らず違う視点をもつことは公務員として働くうえで精神衛生上とても大事だと思います。


ひとことで言うと、1つの考えに縛られて追いつめられてしまわないということ。
公務員はメンタルを患ってしまう方も多いため、仕事を続けていくためにも大事なことです。
特に、若い職員の方にこそ、仕事に対するいろいろな考え方を知ってほしいです。

 

というのも、若い職員は経験がないため、今自分が直面する状況を客観的に見ることができません。
客観的にみるための材料がまったくない状況です。

 

例えば、前回も触れた「仕事が進んでいる」ということに対する認識についてみてみるとどうでしょうか。
経験者からすれば、この仕事は関係者の意見を取り入れながら進めるので、簡単には進まないだろうと見える仕事であったとします。
しかし、一生懸命な若い職員は、スムーズな仕事の完成があるべき姿だと思っています。
そのため、調整などに時間がかかると、それば仕事が進んでいないと悩んでしまう。
そういった調整が本来必ず発生してしまうプロセスであったとしても、それが分からずにただ面倒事が起きていると思ってしまいます。

 

これも、誰かがひとこと教えてくれれば「ああ、気にする必要ないのね」と分かって楽になる話ですが、そうした人がいないと1人悩むことになってしまいます。

 

「いや、若いのだからその中でがむしゃらに頑張って自分で覚えていくものだ」という精神論もあるかもしれません。
しかし、これは本来周りが教えてあげるべき仕事の目的や性質を新人にきちんと伝えていないだけではないでしょうか。

 

私自身、部署が移って県の上層部とのある出張の際に、詳細なマニュアルづくりで連日遅くまで時間外をしたことがありました。
スマホで何でも調べられる時代に、ここまで詳細なマニュアル作りに何の意味があるのかと思いつつ、それが最も重大事であることのようになっていたため、そういうものかと思って必死に頑張りました。
しかし、その行事を終えてみて、その部署での仕事も長くなると、どう考えても無駄な仕事であったことが分かってきました。
部署を移ってきたばかりの自分にははじめ事の軽重が判断できなかったですし、一回もやってみずに「それは無駄ですね」とは言えない状況だったとは思うため、マニュアルは作るだけ作らされたと思います。
それでも、誰かひとことでも「一応つくることになってるけど対して重要なものじゃないよ」と教えてくれれば心理的に相当楽だったはずです。

 

関連して、日経新聞日曜版の中の連載コラム、坂井修一さんの「うたごころは科学する」の2021年12月12日(日)掲載「模範解答を離れて」の中で、こんな話がありました。


われわれの人生や社会の諸問題は、決断のための材料が揃っていないことの方が多い。まして、模範解答などどこにもありはしない。受験秀才の中には、30歳近くになってもこのことに気付かない人がいる。

 

公務員が直面する地域の問題もこのとおりで、模範解答はありません。
どうにかして解決法が見つかってしかるべきだ、と思っていると、簡単には解決法が見つからずどうも仕事が進まない、と悩んでしまうことになるかもしれません。
そのようなときに手を抜いていいとか、解決しなくていいとか、そういうことではなくて、公務員が扱う仕事は面倒で、進まないけど、そのプロセス自体も仕事、と思っているといいのではないかと思います。

 

若い職員の方には思い詰めて欲しくないですし、自分も思い詰めなくていいよといってあげられるようになりたいと思っています。

 

そういった意味でも若い方にもボストン市庁舎おすすめです。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

ボストン市庁舎感想④ 公務員の方はプロジェクト的発想に捉われてませんか?「仕事が進まない」、でも実はきちんと「仕事」をしているのかも

みなさん、こんにちは!

映画、ボストン市庁舎の感想続きです。


民主主義とは?ということを、市民の意見を聞くボストン市の仕事の様子を淡々と映しながら描く映画ですが、公務員としての在り方についてもいろいろ考えさせられます。

 

この映画をみていて、「仕事が進む」ということに対する考え方が変わりました。
関係者との調整が難航したりすると、一般的に「仕事が進まない」ということになります。
しかし、公務員の仕事に限っては、それも含めて「仕事が進んでいる」と考えていいのかもしれません。

例えば、何かの計画の担当者だったとします。
「仕事の完成」という面からは、「今年度中に計画を完成させる」ということになります。
単純に仕事を期限までに完成させたければ、できるだけ反対意見などなく、計画ができてしまうようにことを進めたいものです。
一方で、手続き的には市民への説明会を開いたり、審議会の委員の話を聞いたり、パブリックコメントを実施などを経る必要があります。
その中で、いろいろな意見が出ると、新たに調整したり、軌道修正が必要になります。

こういうときに、担当者としては、「ああ、ぜんぜん仕事が進まないなぁ」と思うことになります。

私もそう思っていましたし。
また、もしこれが民間のプロジェクトなどであったら、効率重視となるところもあるかと思うので、効率が悪い仕事の進め方になったな、という評価になってもしかたがありません。
一方で、公務員の仕事の場合、とにかく仕事の完成を目指すのではなく、面倒でも住民などの意見を取り入れ、調整していく、それ自体が仕事そのものである、といっていいのではないでしょうか。
ボストン市庁舎で描かれたのは、そういった地道な意見のすり合わせの作業でした。

公務員の仕事は非効率とよく非難されるので、民間にならえ、ということで、プロジェクト的発想になって、この仕事を完成させる、と考えると、調整といったプロセスは邪魔なものでしかないように見えてきます。
しかし、市民からの意見を聞く、調整するといったことこそが、行政に期待された役割だと思います。
そう考えると、実際担当する側としては非常に面倒であるそういった調整業務も、腐ってしまわずに大事な仕事だと思ってできるのかな、などど思います。

いい映画は本当に学びが多いですね。
まだの方は是非ご覧ください。

それでは、スーパー公務員によろしく!

 

 

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「公文書は民主主義の根幹」?ボストン市庁舎を見た後に岸田首相の公文書関係の答弁をみて思ったこと

みなさん、こんにちは!
ニュースを見ていまして、公文書の不祥事の関係で、「公文書は民主主義の根幹」という答弁を岸田首相がしていました。
また、そのためにデジタル化を進める、という話もありました。

デジタル化というと、まず公文書をデジタル化していこう、という動きはどこでも始まっていると思います。
うちの県でも、文書はどんどんシステムに残していこうということになっています。
しかし、その理由はちゃんと職員に対して説明されていません。
デジタル化は働き方改革の時短という話にも良く出てくるので、公文書のデジタル化も働き方改革の一環という側面でだけ受け取っている職員も多いと思います。
それもあって、文書をシステムに登録したりするのは手間なことから、職員の理解が得られていないという感じです。
この点については以前もちょっと触れました。

 

takeaway.hatenablog.jp

 

さて、公文書のデジタル化の意味は本来働き方改革など関係なくて、首相のいうとおり、「公文書は民主主義の根幹」なので、より正確に、恒久的に残すためにデジタル化するというのが100点満点の回答でしょう。
全くその通りなのですが、この「公文書は民主主義の根幹」という意味をわれわれ日本人がちゃんと理解しているかというとちょっと心配です。

というのも、また映画「ボストン市庁舎」や「ニューヨーク公共図書館」の話になります。
特に「ニューヨーク公共図書館」の方に描かれるのですが、過去の文書や資料を残しておこうという取り組みの熱心さが尋常ではありません。
膨大な手間をかけて、過去の資料を一つづつ手作業でデジタル資料にしていく場面があります。

また、ボストン市庁舎の中でも、ボストンの歴史資料を複数のスタッフがデジタルアーカイブにしていきます。
その理由として、担当者が「手間がかかるけども、それによって市民の方が情報にアクセスしやすくなるから」とこともなげにさも当然のようにいっていたのが印象的でした。

この、いわゆるアーカイブとして、とにかくすべての情報を残しておこうという考え方は、ちょっと概念的にわれわれ日本人には理解しがたいところがあるのかな、と思います。
記録を永続的に補完するためのアーキビストという職種というか概念も日本ではまったく一般的ではありません。

ボストン市庁舎の中でも公文書館は民主主義にとってもっとも大切な施設の一つといった表現がでてきたように記憶しています。
情報を残しておく、ということの理由の一つには、民主主義においてそれぞれの市民が最良の判断をするため、というのもあるのかもしれません。

西洋の理性への信頼とか、そのあたりが大元なのか、私もまだよくわからないのでアーキビスト関係の本など読んでいきたいと思っています。
余談になりますが、そうはいっても、こういった部分は体感的にはどうしても理解できない文化の差かもしれないな、と思ったりもします。
評論家の小林秀雄が、どこかの対談でギリシャなどの西洋の考え方はどれだけ本を読んだりしても本質的にはどこか我々にはわからない、というような気がしているといったことを述べていたと思います。
「ボストン市庁舎」や「ニューヨーク公共図書館」などをみていると、民主主義の理想的な姿だな、とは思うのですが、日本との彼我の違いの根本的な違いはいったいどこに行きつくのだろうと考えてしまいます。

ちょっとまとまりのない話になりましたが、「公文書は民主主義の根幹」ときれいごとを言うのは簡単だけど、その意味を理解しようとすると結構深く考えないといけないのでは、という話でした。

それでは、スーパー公務員によろしく!